間違った働き方改革。残業禁止を強制する弊害。
残業禁止したのに、従業員の顔色がなんかすっきりしない。
そんなことはないですか?それは間違った「働き方改革」の推進のせいかもしれません。働き方改革はそもそも残業抑制だけではありません。
間違った働き方改革の推進による、残業抑制。今回は、その部分に視点を当ててみます。
文:WAWAワーク編集部 ITコーディネータ濱田
強制退社で問題は解決する?
働き方改革の一環で「長時間労働」を是正するよう取り組んでいるという企業は多くいます。
場合によっては、企業側が強制力を発揮させている場合もあります。例えば、時間になったら「パソコンの電源、オフィスの電源が強制で切れる」というようなものです。
これを行っている企業の方は、本当に大丈夫でしょうか。大丈夫、改善した!現場も満足!と言えるでしょうか。
私が見聞きした中でこのようなものがありました。
強制退社で発生する問題点
持ち帰って残業する
会社で残業ができなくなったけど、仕事は終わらない。そうなると、データや印刷物を持ち出して自宅や会社の外で仕事をするようになりがちです。会社近くのカフェに寄ると、同僚が何人かいた、という話しもあります。
また、支店長がアパートを一部屋借りて、そこにみんな集まって仕事をしている、という不思議な話しがありました。
残業抑制の裏で、隠れ残業が発生する。全く意味がありません。
早朝出勤するようになる
電気が付くのは、6時~19時。なので、19時まで働いて帰り、朝6時から出社するようになった。そういう話も聞きます。でもこれは、夜から朝に時間がスライドしただけです。
また、今までは仕事で、飲み会などの会社の行事も出ずに済んでたが、早く会社を出ることで参加しなくてはいけなくなった。仕事は残っているから明日の朝出なくてはいけなくてしんどい。そういう話しも聞きました。
拘束時間が変わらない、または増えているという残念な例です。
管理されている窮屈さ
残業前に事前申請出すルールだけど、マネージャーに色々聞かれるし場合によっては怒られる。面倒なので残業申請を出さずに、こっそり残業してしまう。こういう話しも聞きます。
残業禁止を強制するということは、経営者は「残業が多い部署のマネージャー」の評価を下げるようになります。そうなると、マネージャーは残業の理由に関係なく、なるべく部下に残業をさせないようにしていきます。
残業の事前申請で文句を言われるが、仕事は終わらない。そうなると担当者は、自主的にサービス残業をするしかなくなってきます。
マネージャーに集まる残業
「マネージャーの残業はカウントしない」企業や、先ほどのように「部下に残業させるとマネージャーの評価が下がる」、そういう場合にはマネージャーに業務負担が回るようになります。
本来であれば、マネージャーが行わないような雑多とした業務もマネージャーが行っているという話しを聞いたこともあります。
より高度で重要な使命を持つマネージャーが、担当レベルの業務で時間を取られていく。とても残念な例です。
なぜ、そのようなことが発生するのか
業務改革が必要
なぜ、そのようなことが発生するのでしょうか。
その1つは、そもそも残業が発生する根本的な問題にまで踏み込めていないからです。
よく聞くのが、「業務効率化」です。ただ、個人が行える業務の効率化というものは大したことはありません。個人だけでなく、チームや会社、場合によっては取引先にまで広げた「業務改革」が必要です。
個人で踏み込めないのは「他部署に定期的に出している資料作成」など、自分の判断ではどうにもならないようなものです。ですが、そのような資料の大半は過去からの流れであって、今は重要視されていないというような話しもあります。
部分最適だけでなく、全体を見通す全体最適が求められています。
「業務フローの棚卸」まずはこれを行っていき、何故残業が発生するのか、業務の流れのどこで発生するのか、を考える必要があります。
意識改革が必要
残業禁止を言いながら、実は残業をする方が得なまま、という会社も多い現状もあります。
それは、残業代という「収入」の面。そして、「評価」の面です。
下の2つ、みなさんの企業では、どちらが高い評価でしょうか?
・1週間で100%の成果
・1週間で80%の成果
では、こちらはどうでしょうか。
・1か月の残業時間10時間。1か月休み無しで100%の成果
・1か月の残業時間10時間。有給休暇1日取得して98%の成果
こう書くと何となくわかっていただけたかと思いますが、最初の質問では「1週間」というのが何時間の労働に対しての成果かというものが無いわけです。
後の質問では、有給休暇取得して成果が下がったら評価はどうなるか、という視点です。
残業を禁止しながら、時間当たりの成果ではなく、1週間とか1か月といった期間当たりの成果に目を向けると、発生してしまう問題です。
「収入」と「評価」この問題を解決しない限り、休みを取らずに残業した方が従業員には得、になるわけです。
経営者と従業員との間に、温度差は無いですか?
残業禁止を強制すること自体が問題ではありません。
実際に残業禁止を強制すれば、やらなくてもいいような無駄な作業やダラダラ残業は確実に減るでしょう。
ただ、「残業する方が得」のままでの残業禁止は、隠れ残業など見えない無理が発生し、従業員のモチベーションが悪化する可能性があります。
「残業をしない方が得」とまでは言いませんが「残業をしなくても得をする」という流れにしなくてはいけません。
今、残業禁止を強制している企業は、ぜひ、現場に目を向けてみてください。
この時、マネージャーに結果だけを聞くと「今まで30時間だった残業が、15時間に減りました」という報告になりがちで、従業員も満足していると勘違いする可能性もあります。
ぜひ、現場の生の声を定期的に聞く。例えば、従業員に匿名アンケートを取るなどで聞く。そのことで現場との温度差を感じることもできます。